愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
これまで夫が連れていってくれたのは高級料理店ばかりだったので、意外に思っていた。

すると彼が苦笑する。

「コンビニ飯やジャンクフード、本当は好きなんだ。中高生の頃、学校帰りに友達と買い食いするのが楽しかったな。成美には失望されないようにカッコつけた店に連れていったけど、フェアじゃない気がして。君は知られたくない部分も見せてくれた。俺もそろそろ仮面を外さないと」

夫への信頼と愛情は増す一方で、失望するなどありえない。

「私の知らない朝陽さんがいるんですね。全部、見せてください」

「がっかりしない?」

「絶対にしません。コンビニの食事が好きだと知れて嬉しいです」

「俺の妻は寛大だな。それじゃ、もうひとつ本心を明かそうか」

おでんの大根をふた口で食べきった朝陽が、ニッと口角を上げた。

「いつも俺から求めているけど、たまには成美から迫ってほしい。これが本心」

「キスしてよ」と声の糖度を上げて囁いた夫が、成美に顔を寄せて目を閉じた。

(今ここで、私からするの!?)

焦って周囲を見回し誰もいないのを確認してから、夫の唇に意識を集中させる。

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