愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
ふたりの人影が公園前を通り過ぎてマンションの中に消えていき、恥ずかしさに成美はいたたまれない気分になる。

(人に見られた。あっ、もしかして、マンションの窓からも覗かれている可能性が……)

夫が執拗に成美の唇を吸う。

どうせ離してくれないのなら彼の陰に顔を隠していた方がいいと思い、もがくのをやめた。すると恥ずかしさが振り切れ、次第にどうにでもなれという気持ちになった。

(私は悪くないもの。堂々としていよう)

スッと夜風が吹き込んで、もう一段階、心が軽くなった気がした。

胸に手をあてたら、やっと唇を離した夫が口の端を上げて成美の目を覗く。

「今、どんな気分?」

「すごくいい気分です」

高層マンションがそびえる空に星が瞬き、慣れない夜の匂いに微かな高揚を感じた。

(知らなかった。夜の公園で食べるコンビニのおでんがこんなに美味しいなんて)

「こういうのって楽しいですね。またやりたいです」

自然な笑みを浮かべると、夫が嬉しそうに目を細める。

「時々、夜遊びしよう。ただし、俺と一緒にね。危ないから夜中にひとりで出歩かないでよ」

「はい」

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