愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「今さらだろ。成美の裸は何度も見ている。隅々までね」

夫が笑ってからかうような言い方をした。

「こんなに明るい中で見られるのは恥ずかしいんです。貧相な胸だと自覚していますので」

「まだ気にしていたのか。胸は大きければいいというものじゃない。そのままで十分に魅力的だよ」

「背中と間違えた人に言われても説得力がありません。もう、朝陽さんのせいで泡が少なくなったじゃないですか。足さないと……あれ、入浴剤は?」

浴槽の縁に置いたはずの入浴剤のボトルは、いつの間にか洗い場の棚の上に移動していた。

「朝陽さん、取ってください」

「ヤダね。自分で取りなよ」

そんなことをすれば、夫の目の前に全裸をさらしてしまう。

ククッと笑う夫を赤い顔で睨んでも効果はなく、余裕の顔をして泡を捨て続ける彼に成美は戸惑った。

(私が困っているのが楽しいの?)

「帰ってきてからの朝陽さん、ちょっと意地悪です。優しくて紳士的なあなたが、どうしたんですか?」

「公園で君が言ったんだろ。俺のすべてが見たいと」

「言いましたけど……」

「俺にはこういう顔もあるんだ」

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