愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「あっ、こっちに来ないで――きゃあっ!」

朝陽が急に接近したため、お湯が大きく揺れて泡のほとんどが浴槽の縁からこぼれてしまった。

さらには抱えあげられて膝の上に座らされる。

背中やお尻が彼に密着して慌てふためく。

体を隠そうとした両手は掴まれて、頭の上で手首を拘束された。

泡風呂と呼べなくなった水面からは小ぶりな胸が丸見えで、成美の羞恥が限界に達する。

「こんなの恥ずかしすぎます!」

「いいね、その真っ赤な顔。大丈夫、そんなの吹き飛ぶくらいすぐに気持ちよくなるから」

色のある声を耳に吹き込まれ、ゾクゾクと鳥肌が立った。

「ここから手を動かすなよ」

珍しく命令口調で言ってから拘束を解いた彼は、その手で成美の胸に触れた。

(今なら逃げ出せそうなのに、どうしてか動けない)

浴室で情を交わすのは成美の常識外で、してはいけないと理性が警告を出している。

けれども愛する夫の求めに応じたいという女性の本能が、無意識に成美の体を動けなくしているのかもしれない。

夫の器用な手が小ぶりな胸をもてあそぶ。

「スベスベで柔らかい。最高だろ。なにが足りないって?」

< 177 / 282 >

この作品をシェア

pagetop