愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
背はスラリと高く百八十センチを超えていそうで、見た目からは大企業の重役というより俳優のような華やかな雰囲気を感じた。

敷居をまたいだ彼が軽く会釈して、爽やかに微笑む。

成美は目を丸くして、鼓動を最大限に高まらせた。

彼の優れた容姿に驚いているのではなく、見覚えのある顔だったからだ。

(この人が私のお見合い相手だなんて。偶然なの? ど、どうしよう……)

朝陽と出会ったのは、ひと月半ほど前のことで――。



よく晴れた五月最後の日曜日、成美はとあるスポーツジムを訪れた。

開館の九時ちょうどに受け付けスタッフに渡したのは一日無料体験チケットで、同僚の梢から残業を代わってくれたお礼にともらったものである。

梢は半年ほど前にダイエット目的で入会したそうで、ありがたくチケットを使わせてもらった。

(スポーツジムは初めて。エアロビクスやヨガをやってみたい。プールに入るのは久しぶりでワクワクする)

子供の頃からたくさんの習い事をしてきたが、生活が苦しくなった高校一年生の時にすべて辞めた。

運動は得意と言えないが体を動かすのは好きで、スイミングクラブには十年通った。

< 23 / 282 >

この作品をシェア

pagetop