愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「私を心配してくださってありがとうございます。休み休み探したので大丈夫です。赤ちゃんも元気ですから。どうしても見つけたかったんです。そのネックレスはお母様にとってすごく大事なものだと感じたので。昨日、朝陽さんに聞きました。お父様からの最初の贈り物だというお話を」

朝陽が子供の頃に尋ねたら、母が頬を染めて教えてくれたそうだ。

『お父さんから初めてプレゼントしてもらったジュエリーなのよ』

結婚する前の娘時代の思い出らしい。

デザインがすっかり古くなったそのネックレスを大切に使い続け、なくしてしまったら必死になって探すのは、今でも夫を深く愛しているからだろう。

隅田川沿いの遊歩道でネックレスを見つけた後、朝陽は『ひとつやらねばならないことがある』と言っていたが、それは父の説得だった。

あの日の夜、朝陽は何度も父へ連絡を取ろうとしていた。

なかなか繋がらなかったが、零時近くになってやっと父親が電話に出た。

今後は何事も夫婦で相談するという約束をしたため、成美にも会話を聞いてほしいと、フリーハンドでの電話だ。

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