愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
朝陽は寂しがっている母親の精神状態を説明し、エメラルドのネックレスをなくして必死に探していた話もした。

母の愛情を父に伝えようとしたのだが、それに対する返事は冷たく、狙いから大きく外れていた。

『新しいジュエリーを贈れと言うのか。限度額のないカードを渡してある。ほしいなら自分で買うだろう。くだらない相談をするな』

『そんな話はしていません。母さんが寂しがっていると言っているんです。それは息子の俺がいくら通っても埋められない。夫からの愛情に飢えているんですよ。もう何十年も。なぜ母さんを顧みないんですか。これまで何度も精神的な不調を伝えたでしょう。それでも息子任せでなにもしない』

『前提条件が違う。俺の仕事が忙しく構ってやれないのを承知の上で結婚を承諾したんだ』

『仕事を言い訳にして無責任な真似をするな!』

結婚の挨拶をしに行った日に一度だけ夫の父と話したが、その時の朝陽の態度や口調から父親を恐れているのだろうと感じていた。

上司のような存在で無理もないと思うが、親子らしい雰囲気が少しもないのが気になっていた。

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