愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
しかしこの時の朝陽は恐れていられないと、必死に父親に立ち向かっていた。

『エメラルドのネックレスは俺の妻が探しだしてくれました。次の日曜の十五時頃、それを渡しに実家に行きます。母さんに少しでも謝罪の気持ちがあるなら、父さんも同席してください』

強い口調でそう言って、朝陽から電話を切ったのだ。

成美は夫の母の背をさすりつつ時間を気にした。

リビングの壁にかかった振り子時計は十五時十五分をさしている。

(お父様、お忙しいのかな)

来る気がなかったとは思いたくない。

息子の説得が通じず、妻の激しい寂しさを知っても平気で放置し続けられるような冷血漢ではないと信じたかった。

「成美さん、ありがとう。もう大丈夫よ。恥ずかしいところを見せてしまったわ」

夫の母が涙をおさめ、ため息をついてソファに腰を戻した。

成美も朝陽の隣に戻って座る。

「ケーキと紅茶をいただいてちょうだい」

「はい、ありがとうございます」

紅茶をひと口飲んだら、朝陽がさりげない様子で腕時計を確認した。

彼も時間を気にしているようで、父に来る気がないと判断したのか諦めのため息をもらした。

< 254 / 282 >

この作品をシェア

pagetop