愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
成美の胸にも残念な思いが広がる。
(三日前、『もうとっくの昔に諦めているのよ』とお母様が言っていたのは、お父様についてだったのかな。お父様から愛されるのを諦めた……そういう意味なのかも)
ジュエリーケースを手に取って蓋を開け、エメラルドのペンダントトップを見つめる母親が力なく微笑んだ。
「これが戻ってきただけで十分だわ。あの人との大切な思い出が詰まっていて、私の宝物なのよ。本当にありがとう」
お礼を言われても心が痛くて喜べない。
夫の母の寂しさが癒える日はこない気がして、なんの力にもなれなかったと目を伏せた。
するとリビングのドアが開いた音がした。
下がっていた田中が戻ってきたのだろうと思い、なにげなくドアに振り返って驚いた。
がっしりと体格のいい初老の男性が無言で入ってくる。
朝陽の父親だ。
休日も仕事だったのか濃いグレーのスーツ姿で、短い髪をオールバックにまとめている。
髪の三分の一ほどが白くても老いより貫録を感じさせた。
(三日前、『もうとっくの昔に諦めているのよ』とお母様が言っていたのは、お父様についてだったのかな。お父様から愛されるのを諦めた……そういう意味なのかも)
ジュエリーケースを手に取って蓋を開け、エメラルドのペンダントトップを見つめる母親が力なく微笑んだ。
「これが戻ってきただけで十分だわ。あの人との大切な思い出が詰まっていて、私の宝物なのよ。本当にありがとう」
お礼を言われても心が痛くて喜べない。
夫の母の寂しさが癒える日はこない気がして、なんの力にもなれなかったと目を伏せた。
するとリビングのドアが開いた音がした。
下がっていた田中が戻ってきたのだろうと思い、なにげなくドアに振り返って驚いた。
がっしりと体格のいい初老の男性が無言で入ってくる。
朝陽の父親だ。
休日も仕事だったのか濃いグレーのスーツ姿で、短い髪をオールバックにまとめている。
髪の三分の一ほどが白くても老いより貫録を感じさせた。