愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
視線を合わせた者が身構えてしまうような冷たい印象の切れ長の目をしているが、今は眉尻が下がって、前回会った時より迫力がないような気がした。

(お父様が来てくださった。朝陽さん……!)

心の中で呼びかけ夫の手に触れると、軽く握ってくれた。

口角を上げて頷いた朝陽が真剣な視線を父親に戻す。

母親は驚いて、上擦るような声を出した。

「あなた、一体どうしたの?」

たまにしか帰宅しないが、その際には必ず連絡があるのかもしれない。

事前の連絡もなく夫が突然帰ってきた理由を探しているようだが、見当がつかないのか母親は戸惑っていた。

妻が座るソファの横に立った夫の父は、落ち着いた低い声で話す。

「朝陽に呼ばれたんだ。ネックレスをなくして探していたそうだな」

「え、ええ。でもこの通り、手元にあります。成美さんが探してくださったのよ」

切れ長の目がこちらに向いて、成美は慌ててお辞儀した。

会うのは二度目で母親のように結婚を反対されなかったが、成美への関心は薄くまともに挨拶させてもらえなかった。

緊張して背筋を伸ばすと、思いがけず労われた。

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