愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「探すのは大変だったろう。迷惑をかけてすまなかった。見つけ出してくれたことに感謝する。このネックレスには私たち夫婦の大切な思い出があるんだ」

「あなた、覚えているの……?」

母親は夫が突然帰ってきた時より目を丸くしていた。

ネックレスケースに手を伸ばした父親は、ごつごつした指でそっとチェーンをつまみ上げた。

左右に揺れるエメラルドが着物の衿に触れ、母親は言葉が出ないほど驚いている。

妻の首にネックレスをつけた父親が真剣な目をする。

「安物ですまない。今はこれくらいしか買えないが、必ず社を大きくして由紀子さんに相応しいもっと高価な宝石を贈ると約束する。だから俺の恋人になってくれないか?」

(由紀子さんはお母様の名前よね。恋人って……?)

一瞬どういう意味かと戸惑ったが、ネックレスを贈った当時の言葉の再現だと気づいた。

朝陽の母は大きな目をさらに見開いて、たちまち涙をあふれさせた。

「嬉しかったあの時の思い出を大切にしているのは、私だけかと思っていたわ……」

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