愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
思わず見惚れてしまったが、青年の片手が足元のプール壁にあたったので慌てて声をかけた。
「あの、すみません」
しかし聞こえなかったようで、くるりとターンして往路のレーンに移動した彼はドルフィンキックで水中を進むと、水面に顔を出してクロールで遠ざかった。
(ここからじゃ声が届かないみたい)
成美はザブンと復路のレーンに下りた。
冷たい水に鳥肌が立ったが、すぐに慣れて心地よくなり、壁際に立って彼が戻ってくるのを待つ。
数十秒して背泳ぎで近づいてきた彼に、先ほどより大きな声で言う。
「すみません、止まってくださ――」
次の瞬間、彼の右手が強めに成美の胸に触れた。
驚きすぎて悲鳴さえ上げられず、鼓動を加速させて水中で固まるのみ。
やっと成美に気づいた彼が泳ぐのをやめて立ち上がり、競泳眼鏡越しに小柄な成美を見下ろした。
「すまない」
さほど申し訳ないと思っていなそうなあっさりした口調で謝った彼は、頭まで水に沈んでコースロープの下をくぐり、隣のレーンに移ろうとする。
成美は慌てて彼の片足を引っ張った。
(人の胸を触ったのに、それだけなの?)
「あの、すみません」
しかし聞こえなかったようで、くるりとターンして往路のレーンに移動した彼はドルフィンキックで水中を進むと、水面に顔を出してクロールで遠ざかった。
(ここからじゃ声が届かないみたい)
成美はザブンと復路のレーンに下りた。
冷たい水に鳥肌が立ったが、すぐに慣れて心地よくなり、壁際に立って彼が戻ってくるのを待つ。
数十秒して背泳ぎで近づいてきた彼に、先ほどより大きな声で言う。
「すみません、止まってくださ――」
次の瞬間、彼の右手が強めに成美の胸に触れた。
驚きすぎて悲鳴さえ上げられず、鼓動を加速させて水中で固まるのみ。
やっと成美に気づいた彼が泳ぐのをやめて立ち上がり、競泳眼鏡越しに小柄な成美を見下ろした。
「すまない」
さほど申し訳ないと思っていなそうなあっさりした口調で謝った彼は、頭まで水に沈んでコースロープの下をくぐり、隣のレーンに移ろうとする。
成美は慌てて彼の片足を引っ張った。
(人の胸を触ったのに、それだけなの?)