愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『朝一でテスト。その後に体育だよ。マジだるっ』

『いいじゃん。体育なんかやってるふりすればいいもの。うちのクラスなんかハナゲのコミュ英だよ。あいつ、唾飛ばすから前列は最悪。保健室に逃げようかな』

『この前、保健室のおばさんに追い返されたって言ってなかった?』

『そうだった。顔色いいから頑張れるよって教室に戻されたんだ。あのぶりっ子おばさん、男の先生には甘いんだよね。高い声で媚びてキモイ』

毒舌な会話に嫌な気分になった。

これ以上聞かないようにしようと思ったら、ひとりが急に声のトーンを上げた。

楽しい企みごとをひらめいたかのような声は、ひそめきれていない。

『ね、午前の授業を堂々と休める方法、思いついた』

『なに、なに?』

『耳貸して』

気になった成美は彼女たちをじっと見てしまう。

(今、なにかをでっち上げようって聞こえたけど……)

楽しそうに密談を終えたふたりはチラリと後ろを振り向いて、顔を見合わせ軽く頷いている。

そして、ひとりが急に悲鳴を上げた。

『キャア! この人、痴漢です!』

(えっ!?)

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