愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
指をさされたのは彼女たちの後ろに立っていた大学生風の若い男性で、ものすごく驚いていた。

すぐに違うと否定したが、ふたりの女子高生は口々に彼を追い詰める。

『しらばっくれないでよ。スカートの中に手を入れて触ってきたくせに』

『次の駅で降りてもらうから、逃げないで』

『ちょっと待って、俺は本当に触っていないから!』

車内はざわざわし、乗客たちは揃って非難の視線を彼に向けていた。

焦った彼は車両を移動しようとして、近くにいたスーツ姿の男性ふたりに腕を捕らえられた。

その時、電車が駅に到着してドアが開き、大学生風の男性は引きずり降ろされてしまう。

その後ろを女子高生たちがついていく。

成美は焦って座席を立った。

(あの人、きっとなにもしていない)

女子高生ふたり組に痴漢された雰囲気はなかった。

加えて〝でっち上げ〟と言っていたから、午前の授業をさぼるために痴漢冤罪を企てたのだろう。

見ず知らずの男性だが、正義感の強い成美は知らないふりができず、乗客をかき分けるようにして降りようとした。

『すみません、降ります。通してください!』

< 74 / 282 >

この作品をシェア

pagetop