愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
しかしながら無情にも、目の前でドアが閉まってしまった。

焦りながら次の駅で降り、下りの電車に乗り換えて駅をひとつ分戻る。

ホームで大学生らの姿を探すも見当たらず、改札に向かって走った。

すると駅員室の前には野次馬が大勢いて、その中心から必死の弁明が聞こえた。

『やってないものはやってないんです!』

(あそこだ)

野次馬の人垣を潜ると、大学生とふたりの女子高生の他に駅員と警察官がいた。

『やってない証明なんかできないですよ。でもやっていないんです。少しも触っていません』

『言い訳は署で聞くから』

走ってきたために呼吸が苦しかったが、成美は警察官の前に立って彼の無実を訴えた。

『私、近くにいたんです。その男性はなにもしていません。先輩たちの会話も聞いています。午前の授業をさぼりたいという話をした後に、「休める方法、思いついた。でっちあげよう」って言っていました』

皆の視線が一斉に成美に向き、女子高生たちは目をつり上げた。

『は? あんたうちの一年? いい加減なこと言わないでよ』

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