愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『いい加減なのはどちらでしょうか。先輩は赤の他人に罪をかぶせて心が痛まないんですか? この方の人生がどうなってもいいとお思いですか? お願いですから嘘で人をおとしいれるのはやめてください。同じ制服を着た先輩がこんな悪いことをするなんて、悲しいです』

成美が目を潤ませて必死に説得すると、彼女たちはバツが悪そうな顔をしてそっぽを向いた。

その態度で嘘を言っているのがどちらなのか警察官はわかったようだ。

『君たちの方に事情聴取が必要なようだ』

呆れ声でそう言われた彼女たちは、ついに『ごめんなさい』と謝った――。



その時の痴漢冤罪の被害者が、鹿内佑大という大学生だった。

「鹿内さんとお友達だったんですか?」

思いがけない繋がりに成美が驚いて問うと、朝陽がうなずいた。

「今は連絡を取り合っていないが、当時は親しくしていた。冤罪事件の後日、佑大が駅で成美さんを待ち伏せてお礼を渡したのを覚えてる?」

「はい」

下校途中の夕方、女子高の最寄り駅の改札をくぐろうとしたら、鹿内に声をかけられた。

この前のお礼にと紙袋を差し出され、断ったけれど強引に渡されたのだ。

< 76 / 282 >

この作品をシェア

pagetop