愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「先輩たちからなにかされると思いませんでしたし、実際に嫌がらせはありませんでした。きっと根はいい人たちで、あの時は嫌な授業から逃げたい一心で、鹿内さんの人生まで考えが及ばなかったんだと思うんです。話せばきっとわかってくれると思って、追いかけました」

三年生は受験勉強もあって、ストレスも溜まっていたのではないだろうか。

もしあの時、いじめられる心配をしていたら動けただろうかと逡巡する。

それでも絶対に助けたと自信を持って言えず、成美は眉尻を下げた。

(私の良心は、その程度なの?)

考えが顔に表れていたのか、朝陽が優しく目を細めた。

「成美さんは俺の百倍、心がきれいだよ」

「そんなこと――」

「嫌がらせの心配をしなかったのは、上級生を信じていたからだろ? 俺はよく知らない相手に対しては、まず疑ってかかる。自分が損をしないように。それが習慣づいてしまって、成美さんのようにはなれそうにない。君を尊敬するよ」

(尊敬……初めて言われた)

曲がったことが許せない性分を〝硬すぎる〟〝真面目すぎる〟とは言われても、〝尊敬する〟と言ってくれた人はいない。

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