愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
胸に自信が広がり、今までより自分が好きになれそうな気がして頬が緩んだ。

朝陽の言葉は心地いい。

嬉しい気持ちでポワソンを口に運べば濃厚な旨味に感動し、初めは緊張していた本格フレンチを心から楽しむ余裕が生まれた。

(藤江さんとお話するのが楽しい。お料理はこの後、何品あるの? なるべくゆっくり出してほしい)



二時間ほどで夢のようなディナーが終わり、成美は寂しく思いつつ朝陽と一緒に退店した。

外に出ると空には星が瞬き、流れる車のヘッドライトが眩しい。

「藤江さん、今日はご馳走様でした。とても美味しかったです。連れてきてくださってありがとうございました」

「ああ。この店を気に入ってくれたようだね。また来よう」

(またの機会があるの?)

お互いに会う必要がないのにと疑問を投げかけようとしたが、酔っぱらって大声で話すサラリーマン風の男性三人組がこちらに向かってきた。

朝陽がさりげなく成美の腰を引き寄せて建物側に誘導し、ぶつからないよう守ってくれた。

「ありがとうございます」

頬を染めてお礼を言うと彼はニコリとし、それから腕時計に視線を落とした。

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