愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「私、夜景は初めてなんです。きれい……」

都会の夜景を知っている気でいたが、それはテレビや写真で見たからだ。

実物はもっと鮮やかに広がり、迫りくる光のアートに感嘆した。

きっと彼は見慣れているはずだと思ったのに「俺も同じ」と言われ、驚いて隣を見た。

「こんなにきれいな夜景は初めてだ。君と一緒だからそう感じるんだろう」

恋愛映画のような言葉も、彼が言うと本心のように聞こえる。

まっすぐな目を向けられて、たちまち動悸が始まった。

(上流階級の人の会話運びだとわかっている。でも嬉しくて、顔が熱くなる)

朝陽が引いてくれた椅子に座り、置いてあったメニューに視線を落とす。

何十種類ものカクテル名が書かれているが、成美が名前を知っているのはカシスオレンジとジントニック、モスコミュールくらいで味は知らない。

なにを選べばいいかと困る前に彼が助けてくれる。

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