愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「食事ではオレンジジュースだったから違う味にしたら? たとえばカフェロワイヤルはホットコーヒーにブランデーを少量加えたもので、アルコール度数は一パーセントほど。アメリカンレモネードは赤ワインとレモネード。これは三パーセントくらいか。それから――」

軽いカクテルを何種類か教えてもらった中から成美はチャイナブルーを選んだ。

ライチリキュール、ブルーキュラソー、グレープフルーツジュース、トニックウォーターを混ぜたロングカクテルなのだそう。

「いらっしゃいませ」

オーダーを取りに来たのは蝶ネクタイをした中年の男性店員で、朝陽を見てハッとした顔をした。

「藤江様でしたか。すぐに気づかず申し訳ございません」

「今日は珍しくひとりじゃないんですよ。気にしないでください」

いつもは仕事帰りにひとりで立ち寄るそうで、このバーに女性を伴うのは初めてだという。

それを聞いた成美は気恥ずかしさと喜びを感じ、ほんの少し胸を張りたい気持ちにもなり、心の動き方に戸惑った。

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