【短編】悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 そして私は『勇者の末裔』に出てくる、バッドエンド確定の悪役令嬢ユーリエス・フランセル公爵令嬢になっていた。
 一週間も高熱にうなされたのがきっかけで思い出した。

 最初は混乱していたが、三日くらい経ってようやく落ち着いた。妹のことは心配で仕方なかったけれど、今の私にはどうしようもできなかった。
 少し冷静になりこの状況を考え、昔妹に勧められて読んだラノベにあった『転生』だと理解して現在に至る。どうやら物語が始まる前らしい。

 残念なことに転生特典のようなものはないらしく、このままでは私の将来はお先真っ暗だ。さらに浮気に忙しい王太子の政務が、こちらに回されるようになってしまう。
 社畜だった私はもう馬車馬のように働くことにうんざりしていた。
 一番に愛されない生活も、枯れ草のように潤いのない毎日も、なにもかも。

 問題はユーリエスが王太子の婚約者でいることだ。この先、物語が始まればヒロインが現れ、王太子は真実の愛に目覚める。そして私が浮気相手を排除してきた証拠を突きつけ、稀代の悪女だと言って処刑するのだ。

 原作で王太子が浮気しまくっていたとか、そういう描写があったかは知らないけれど、ユーリエスからみたらただの浮気男だ。

 それなら危険を排除して、前世の知識を活かしてお金を稼ぎ、引きこもって悠々自適の生活ができるのでは!?
 ただグーダラして、自由気ままに生きていけるのでは!? それはつまり、夢にまで見た生活の不安のないプロのダラ!!

 と考えた。ここまでが一年半前の出来事だ。
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