悪役令嬢は最後に微笑む


 
「わたくしは庶民であるあなたをいきなり貴族社会に飛び込ませるのは、猛獣がいる檻に入れることと同じだと思って、召喚された時にわたくしが全て背負おうと、強く申し出ました。それで傷つけてしまっていたのならこの場を以て謝罪致します」


「それだけじゃないもの!お茶会の時だって私がアーサー様達にお茶を注ごうとしたら、そのカップを床にわざと落として私に怪我させようと考えていたんでしょ!」


「ああ。あれは俺もあの場にいて見ていたぞ!」


「ファナ様ならともかく……まさかアーサー様。婚約者以外の女性からお茶を持て成される、その意味をご存じないなんてこと、ございませんよね?」


 この国においてお茶会での茶の継ぎ足しは愛を注ぐという意味が込められており、婚約者同士が行うもの。若しくは主に仕える給仕に限られている。

 夫婦となり始めて、甘い時間を共有するという意味で菓子を渡すことが許されている。

 それを知らぬ者はいない貴族達も集うあの場で、ファナはアーサーに茶だけでなく菓子も用意していたのだ。

 あの場で完全に非常識な人間だと周囲から視線を向けられていたファナを、咄嗟に匿うべく取った行動があれだ。



< 57 / 61 >

この作品をシェア

pagetop