君の矢印【完】
「う、うん、大丈夫」
「そっか。なら良かった。」
安心したように目力が弱まる律くんに、胸がぎゅうってなる。
「ありがとう…」
「はぁ、心配した。」
夜の風が少し吹き抜けて、私の腰に回っていた手がもっと強い力で引き寄せられて、律くんに密着する。
「律くんっ、ちょっと、恥ずかしいよっ」
す、すごい強く抱きしめられてるっ
もし誰か来たら、まずよ。
「また同じことしたら、覚えとけよって言ったよね?」
呆れたような声。
「へ?」
街灯に白く照らされた律くんの表情は読めないまま。
鼓動の音が聞こえるけど、この音は私のものなのか、律くんのものなのかわからない…
もしかして、律くんドキドキしてくれてる?
「はー、もう無理。」