ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
 プレートにいくつかの料理を乗せたあと、櫂人さんが中庭へ誘ってくれた。

 パーティの間、大広間と中庭を好きに行き来できるとのこと。天気もよくガーデンパーティにはうってつけの気候だ。澄んだ青空の下で食べると、おいしい料理がさらにおいしくなる。

 そう思ったのは私だけではないようで、芝生のあちこちに置かれた丸テーブルのほとんどは、談笑する来客たちでほとんど埋まっていた。

 その中に、さっき探していた人の姿が見えた。

 遠目に見ても着物が似合っていて、パーティに華を添えている。
 桜の季節は終わったというのにそこだけまだ満開の桜が咲いているみたいだ。

 あんなにきれいな人の誘いを断ったなんて……。
 
 業務や立場のことを考えたら彼女を同伴する方がいいに決まっているのに。

それがいったいどういうことなのか。考えまいとしても無理だ。

 彼は本心から私のことを大事に思ってくれている。そのことが実感となってじわじわと胸に染み込んできた。

 つき合っていた頃、優しくて誠実なところが好きだった。あの頃から彼は少しも変わっていない。そんな彼に私も誠実に向き合うべきなのかもしれない。

 芝生の一番端のテーブルにはちょうど誰もおらず、そこに持っていた料理やグラスを置いてから彼と向かい合った。

「櫂人さん、今日はこんなに素敵なパーティに連れてきてくださりありがとうございます」

 藪から棒に切り出した私に、彼はほんの数回目をしばたたかせた後、ほころぶような笑顔を浮かべた。

「喜んでもらえてうれしいよ。強引に誘ってしまった自覚はあるから、嫌がられたらどうしようかと思っていたんだ」

 眉を下げた彼に慌てて左右に顔を振る。

「せっかく来たんだから、難しいことは抜きにして楽しんでほしい」

 取ってきたものを食べようとうながされ、無条件でうなずいてしまった。あんなに緊張していたのに、食い気が勝ってしまうなんて我ながら女性としてどうかと思う。
 だけどそれくらい魅力的な料理ばかりなのだ。おかもとのメニューの参考にもなるだろうし、ここはしっかり味わっておかねば。

 誰に向かってしているのかわからない言い訳を心の中で唱えながら、皿の上のひとつを口に入れた。
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