ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
 しまった、しゃべりすぎた!

 料理のことになるとついあれこれとしゃべりたくなってしまうのは、職業病に近いかもしれない。

 祖父のことを手伝っておかむらで働き始めてから、調理や栄養に関する勉強を少しずつしてきた。お弁当のメニューを考えたり、お客さんに勧めるのにきちんとした知識があった方がいいと思ったのだ。

 だからといってここでそれを披露する必要はない。

 軌道修正しなければと焦っていたら、ソフィア夫人が先に口を開いた。

『すごいわ! お詳しいのね。もしかして料理人の方なのかしら?』
『いえ、私は違いますが、祖父が和食の料理人で』
『彼女の実家はお弁当屋さんで、彼女もそこで働いているんですよ』

 焦りのにじんだ私に、櫂人さんがさりげなく補足を入れてくれる。

『納得』とでも言うように大きくうなずいたソフィア夫人の隣で、大使が櫂人さんの肩をぽんと叩いた。

『英語が堪能で料理もできて美人、まさに大和なでしこだ! いい人と巡り合ったな。逃がすなよ、カイト』
『ああ、俺にはもったいないくらいすばらしい女性だ。もちろん、逃がすつもりなんてない』

 聞いている方が恥ずかしくなるような宣言を、なぜか大使ではなく私の方を見つめながらされ、脳内で声にならない悲鳴を上げる。『違います』とも『そんなことありません』とも口にすることができず、一瞬で真っ赤になったであろう顔を両手で覆いたいのを必死にこらえてうつむいたら、後頭部をぽんぽんと軽くはたかれた。
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