ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
二年八か月ぶりに重ねた唇は、お互いの涙で濡れていた。しっとりと重ね合わせた後、ゆっくりと離される。
まぶたを持ち上げると、目の前で深いブラウンの虹彩がきらきらと揺れて輝いていた。
きゅうっと苦しいくらいに胸が高鳴った。
次の瞬間、再び唇を塞がれる。さっきよりも深い。
ぬるりと唇の合わせをなぞられ、生温かくぬかるんだ舌が分け入ってくる。一瞬涙の味を感じたが、すぐに別の感覚にかき消された。歯列をなぞり口蓋を舐めた後、舌を吸われ引き出された。
ざらりとした表面を合わせるように擦りつけられ、痺れるような感覚に力が抜けそうになる。彼の胸もとをきゅっと握り締めたら、一気に根元まで舌を絡め取られた。
「ふっ、んん……っ」
くぐもった声が漏れ、溺れるように彼の胸にしがみつく。
こぼれた唾液を丁寧に唇で拭った後、彼はそっと離れた。
濡れた唇に空気が触れてすうっと冷たい。
途端、どうしようもなく胸が締め付けられた。
もう一ミリだって離れたくない。
衝動に突き動かされるように勢いよく伸び上がり、彼の唇に自分のものを押し当てた。
自分からキスするなんて初めてで、羞恥のあまり顔が燃えるように熱くなる。両目をぎゅっと閉じて耐えていると、背中に回された腕が強く締まり、唇が離された。
「夢なら覚めないでくれ」
胸が苦しいくらいに締め付けられた。
私だけじゃなかったの?
夢でもいいから会いたいと願った。
夢に見て、目が覚めて涙した。
彼もそんな日々を過ごしていたのだろうか。
たまらずしがみつくように大きな背中に腕を回すと、彼はぴくんと小さく肩を跳ねさせ、苦しげに息を吐き出した。
「今日はきみの気持ちが知れてよかった。そろそろ送って行こう」
私の手を引きながら立ち上がった彼に、すがりつく様に抱き着いた。頭を左右に振って、額を広い胸にこすりつける。
「さやか……」
ため息混じりの声が降って来た。顔を上げると、彼は困ったような微苦笑を浮かべている。
「これ以上はがまんできなくなるから」
意味に気がついた途端、かっと顔が熱くなった。それでも離れずに彼のシャツをきゅっと握り締める。
「さやか」
咎めるような響きを含んだ声に、必死にかぶりを振った。広い胸に頬をすり寄せ、喉から声を絞り出す。
「教えてください。あなたが夢でもまぼろしでもないってこと」