ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
やっぱりお断りするしかないのよね……。
またとないご縁だが、断るなら早い方がいい。
ため息をひとつつき、エプロンのポケットからスマホを取り出す。
間をつないでくれた櫂人さんに、まずはその決定を伝えよう。彼の顔を潰すようなことがないようにはどうしたらいいのかも相談したい。
祖父が倒れたとき、彼は救急車を呼んでくれただけでなく、救急隊員が駆け付けるのを玄関の外で待っていてくれた。その上、自分が拓翔を連れて追いかけるからと、私を救急車に同乗するようにうながしてくれた。
気が動転していた私は彼に言われた通りにしただけだ。祖父が大事に至らずに済んだのは、彼のおかげに他ならない。
そのことを祖父に伝えたら、苦虫を噛み潰したような顔をした後、『世話になったと伝えといてくれ』と言われた。
祖父は頑固だが義理には厚い。たとえ嫌いな相手でも受けた恩にはきちんと感謝する。そんな祖父が櫂人さんのおかげで英国大使から注文をもらえたと知ったらどう思うだろう。少しは櫂人さんのことを許す気持ちになってくれるだろうか。
今となってはそれも無理な話だ。
夢想している場合ではないと、櫂人さんにメッセージを送る。月曜日の昼間だから勤務中だと思うが、メッセージは自分のタイミングで見るから遠慮せずに送ってほしいと言われていた。
「グレイ大使の、お弁当のことで、ご相談があります、っと」
送信マークを押して顔を上げたとき、目の前のすりガラスに黒い人影が映った。
またとないご縁だが、断るなら早い方がいい。
ため息をひとつつき、エプロンのポケットからスマホを取り出す。
間をつないでくれた櫂人さんに、まずはその決定を伝えよう。彼の顔を潰すようなことがないようにはどうしたらいいのかも相談したい。
祖父が倒れたとき、彼は救急車を呼んでくれただけでなく、救急隊員が駆け付けるのを玄関の外で待っていてくれた。その上、自分が拓翔を連れて追いかけるからと、私を救急車に同乗するようにうながしてくれた。
気が動転していた私は彼に言われた通りにしただけだ。祖父が大事に至らずに済んだのは、彼のおかげに他ならない。
そのことを祖父に伝えたら、苦虫を噛み潰したような顔をした後、『世話になったと伝えといてくれ』と言われた。
祖父は頑固だが義理には厚い。たとえ嫌いな相手でも受けた恩にはきちんと感謝する。そんな祖父が櫂人さんのおかげで英国大使から注文をもらえたと知ったらどう思うだろう。少しは櫂人さんのことを許す気持ちになってくれるだろうか。
今となってはそれも無理な話だ。
夢想している場合ではないと、櫂人さんにメッセージを送る。月曜日の昼間だから勤務中だと思うが、メッセージは自分のタイミングで見るから遠慮せずに送ってほしいと言われていた。
「グレイ大使の、お弁当のことで、ご相談があります、っと」
送信マークを押して顔を上げたとき、目の前のすりガラスに黒い人影が映った。