危険な彼に焦がれて
「もう私に帰る家なんてないの。私のことなんて放っておいて」
きつく言って、その場から去ろうとした。
……腕を掴まれてできなかったけど。
「そうだったんだね。ごめんね、無神経だった」
謝られてしまい、逆にばつが悪くなる。
「ねぇ、せっかくだし、俺のところに来ない?」
しかし、それもすぐに消えた。
唖然として、その男を見遣る。
何を考えているか分からない。
私なんかを連れていって、どうするつもり……?
「誰があんたのとこなんか……」
「でも、帰る場所がないんでしょ?俺のところに来てくれたら、寝食を提供するよ」
にこりと女を魅惑するような笑みでそう言った。
よくよく見れば、この男はかなり容姿が整っており、笑うことでより美しく見せている。
警戒心を解くような柔らかい雰囲気。
でも、私の本能がこの男を危険だと言っていた。
何者なの、この人……