危険な彼に焦がれて


「もう私に帰る家なんてないの。私のことなんて放っておいて」


きつく言って、その場から去ろうとした。


……腕を掴まれてできなかったけど。


「そうだったんだね。ごめんね、無神経だった」


謝られてしまい、逆にばつが悪くなる。


「ねぇ、せっかくだし、俺のところに来ない?」


しかし、それもすぐに消えた。


唖然として、その男を見遣る。


何を考えているか分からない。


私なんかを連れていって、どうするつもり……?


「誰があんたのとこなんか……」


「でも、帰る場所がないんでしょ?俺のところに来てくれたら、寝食を提供するよ」


にこりと女を魅惑するような笑みでそう言った。


よくよく見れば、この男はかなり容姿が整っており、笑うことでより美しく見せている。


警戒心を解くような柔らかい雰囲気。


でも、私の本能がこの男を危険だと言っていた。


何者なの、この人……

< 10 / 72 >

この作品をシェア

pagetop