見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
玄関の外に出ると、陽射しは暖かいんだけど少し風があった。

歩いているともろに風を受ける顔がピリピリと痛い。
気温は関東の方が全然暖かいんだけどね。

…これが関東の冬の空気かぁ…と鼻と頬を両手で覆った。

「こっちは乾燥してるからな」

「あー、空気?」

暖仁くんの質問にまた伊織が答える。
「そ。乃愛、空気が冷たいだろ?乾燥してるから痛いよな…大丈夫か?」

すると、彩愛ちゃんがちょこちょこと私のところに来た。

「のあちゃん、あやめがあっためてあげるー」

と、私に両手を伸ばすのでしゃがむと、その小さな手で私の頬をピトリと触ってくれた。

か…かわいいっ!

「ありがとう、彩愛ちゃん。とってもあったかいよ」

ほんとは彩愛ちゃんの手の方が冷たいんだけど、私の心はほっかほか。

「あっ、俺も乃愛さんをあっためたげる!」

暖仁くんが両手を広げながらそう言った矢先、伊織に「そんな事させるか」と、ガシッと羽交い締めされていた。

「いてぇっ、おじさん、ギブ!キブだって!」

そんな二人を見て微笑ましく思う。
「ふふっ、暖仁くんと伊織って兄弟みたい」


「そうだな、俺と伊織の歳の差とそう変わらないからな」
柊清さんに言われて、そういえば…と年齢を思い出した。
一回り離れてるんだよね。


「おっ、そうだなハル、俺の事は伊織兄ちゃんて呼べ」

「えー、おじさんはもう30だろ?おじさんじゃん…」

「何だと?」
…また何かよくわからないプロレス技みたいなのを暖仁くんにかけてる。

「いてぇって!わかった!伊織兄ちゃんて呼ぶから!」

「よし」
伊織はフフンと笑うと離してあげた。

「ふふっ、あはは」

「ん?どうした?乃愛」

「だって伊織、子供みたいなんだもん、かわいくって」

「な…子供!?」

「あはは!伊織くん、乃愛ちゃんにも言われちゃったね。あ、そっか。乃愛ちゃんは弟さんがいるからお姉ちゃんなんだもんね。だからしっかりしてるのね」

「うふふ、そうね。伊織くんは乃愛ちゃんより年上だけど末っ子くんで、乃愛ちゃんは伊織くんより年下だけどお姉ちゃんなのね。そっかぁ、それで二人はぴったりなのね」

「私、そんなにしっかりしてないですよ…?」

「そんなことないわよ、きちんとしたお嬢さんてわかるもの、ふふ」

「ママ、のあちゃんはおじょうさまなの?」
「えぇ、素敵なお嬢様よ」

「のあちゃん、あやめとおじょうさまごっこしよ?おててつなぐの」
そう言うと小さな手で私の手をギュッと握ってくれた。

かわいいぃ…
小さな女の子に懐かれるのって始めてでキュンキュンしちゃう。

すると反対の手にも握られる感触がして、見ると湊仁くんだった。

「僕も手ぇつなぐー」
とニコニコして私を見てる。

小学3年生の男の子ってこんなに素直でかわいいっけ?
またもやキュンキュンしてしまう。

私の手に顔を近づけた彩愛ちゃんが「のあちゃん、いいにおいがするー」と言うと、湊仁くんも同じ事をして「ほんとだぁ、乃愛ちゃん、いい匂いー」って言ってくれた。

ハンドクリームの香りかな。

そしてそんな私達の後ろでは「俺も匂い嗅ぐー、手ぇ繋ぐー」という暖仁くんと、「誰がさせるかー!」とそれを阻止しようとする伊織の攻防がわちゃわちゃと続いていたが、神社に着くと「ほらほら二人とも、神様の前だからやめなさい」とお母様に窘められた。


神社はさすがに有名なところなだけあって、かなりの人出で賑わっている。

「乃愛、はぐれないように腕に掴まって」
「うん、ありがとう」

「乃愛さーん、俺の腕でもいいよ!」
ペシーン!
「兄ちゃん、僕が掴まるー」
「んじゃしっかり掴まっとけよ、迷子になるからな」
「わーい、ありがとう兄ちゃん」


「パパー、あやめはだっこなの?」
「人がたくさんいて危ないからな。また人が少ないとこで歩こうね」
「はーい」


そんな家族の微笑ましい光景を見ていると、伊織とのこれからの生活が楽しみで仕方がない。

うふふふ、とニヤニヤしていると、耳元で伊織に囁かれた。

「何そんな可愛い顔してんの?キスしたくなるじゃん。つーか、していい?」

色気を含んだ低い声でいきなりそんなこと言われて、ドキーン!て胸がなった。

「だ、ダメだよ?ダメだからね?」

そう言いながらもちょっと妖艶な目をした伊織にドキドキする…

「ふ、キスしてほしそうだけど……じゃあ後でね」

「……うん」

「素直で可愛い」

優しいけどまだ色気を湛えたままの伊織の眼差しに顔が火照って、冷たい風の痛さなんてどこかに行ってしまった。
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