見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
それから、リングの内側に入れる刻印を決め、購入の手続きを終えると、お店を出る前に少しだけ店内のショーケースを覗かせてもらった。

実は私、マニアじゃないけど鉱物が好きで。
お店に少し慣れたせいか、ジュエリーになった石を見てみたくなっちゃった。


ダイヤではなく、カラーの石を見ていたら、綺麗なブルーサファイアのリングに目を惹かれた。

そんな私に伊織が問いかける。
「これ何だっけ、青いの」

「サファイアだよ。これ…とても澄んでいるのに深いロイヤルブルーがすごく綺麗…」
照明の色と当たり方が良いのか、とてもよく見える。


じぃ…と石を見る私に先程の店員さんが話し掛けてくれた。

「お客様は石がお好きなんですか?」

「あっ、はい。でも鉱物マニアと言える程ではないですけどね、ふふっ」

「乃愛はそっち系で石が好きなの?アクセサリーじゃなくて」

「うん。あまり詳しくはないんだけどね」

「このサファイア、気に入ったの?欲しい?」

「欲しいっていうか……伊織のイメージがして惹かれたの」

「俺のイメージ?」

「うん。すごく綺麗で澄んでいるのに深いの。伊織はしっかりしててまっすぐで…愛情深いでしょ?これも…冷静に見えるブルーだけど、奥深い熱さも感じて…あー伊織だぁ…って思ったの」

「へぇ……俺にはそこまでのことはわからないけど、でもそのイメージとこの石が俺っぽいってのは嬉しいよ」

「ふふ、変なこと言ってごめんね」

「いや、全然変じゃないよ。むしろ興味深いし」



次に目を惹かれたのは、深い赤のルビーのリング。

「これは俺も知ってる、ルビーだろ?」

「うん、ルビー。…これはもしや…ピジョンブラッド…だったり…?」

並んでる中で一際大きいものに惹き付けられた。
角度を変えて見ても、やはり他のとは違う。

「え、ピジョン…何?」

「お客様、さすがですね。はい、ミャンマー、モゴック産の非加熱のピジョンブラッドです」

「そうなんですね!…やっぱり違いますね…綺麗です……ほぅ…」

直に本物を見るのは初めてでドキドキしちゃう。

「なに乃愛。これ、すげぇの?」

「うん。…あ、私は鑑定みたいな判断はできないけどね。ミャンマーのモゴック産のルビーは上質と言われてるんだけど、中でもピジョンブラッドは最高の色だから、とにかくすごいモノなの」

「へぇ……」

「あのね、ピジョンブラッドは公佳さんのイメージなの。ルビーって〝宝石の女王〞って言われるんだけど、公佳さんはその中でも一際上質なピジョンブラッドに思えるの」

「へぇ……」

「あっ、サファイアとルビーは同じコランダムっていう鉱物なんだよ」

「えっ?違う色なのに?」

「うん。コランダムの中で赤いのがルビー、それ以外の色はサファイアって名前で呼ばれるの。だからルビーとサファイアは兄弟みたいなものなの。ふふっ、おもしろいよね」

「へぇ兄弟……つーか、サファイアってブルーだけじゃないの?」

「うん、ピンクとかオレンジとかたくさんあるんだよ」

「へぇ……」

あ、つい楽しくなって話しちゃったけど、伊織にはつまらなかったかな…

「ごめんね、知らない話しちゃって」

「いや、すげぇ興味湧いた。石にも、石マニアの乃愛にも」

「や、私なんてマニアじゃないよ。マニアの足元にも及ばないもん」

「ははっ、そこ謙遜する?」

「いやホントに。私をマニアって言ったら、本当のマニアの人達に失礼だよ」

「あははっ、そういうもんか」

「そうなのっ。……あ、色々と見せていただいてありがとうございました。すごく楽しかったです」


「いいえー、実は私も鉱物好きが転じてこのお仕事に就いたようなものなので、お話しできて私も楽しかったです。ぜひまた見にいらしてください」

「ふふっ、ありがとうございます」

店員さんに見送られながら、お店を後にした。
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