愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする
 お礼を言う佐々木さんに遼生さんは戸惑っている。

「いいえ、お礼を言われる資格はありません。……あの子を助けられず、すみませんでした」

 悔しそうに唇を噛みしめながら頭を下げた遼生さんに、佐々木さんの奥さんは手を左右に振った。

「とんでもありません。……碓氷さんがあの子を助けに入ってくれたおかげで、即死は免れたと医師に聞きました。おかげで私たちはあの子の手を握って見送ることができたんです」

「妻の言う通りです。事故の知らせを受け、病院に駆け付けた時はまだ息があって、最後にあの子の温もりを感じることができました。それなのに助けてくれた碓氷さんが記憶喪失となったと聞いた時は、どうお詫びしたらいいのかと心が張り裂けそうになりました」

 それでも佐々木さんご夫妻は愛するお子さんを亡くしたんだ。そう思えるまでに時間がかかったはず。

 ふたりの気持ちを考えると胸が張り裂けそうになる。

「それもお父様から碓氷さんが恋人の記憶のみを失ったと聞き、本当に申し訳なくて……。記憶が戻ったと連絡を受けた時はどんなに嬉しかったか」

「そのお相手がお嬢さんなんですよね?」

 佐々木さんの奥さんにチラッと見て聞かれ、私と遼生さんは顔を見合わせた後、大きく頷いた。

「はい、そうです」

 彼の返事を聞き、ふたりは安堵の笑みを浮かべた。

「記憶を失ってもそばにつかれていたんですね」
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