悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「……どのようにへレーナを倒すか、どのように父上と母上を助けるか考えてた」
「そうね、聖剣を使えるのはフレッドだけだから、そこは頼るしかないけれど」
「もしへレーナに聖剣が通じなかった場合はどうたらいいかと思ってな」
「その時は私がいるわ」

 なんの曇りもないアメジストの瞳で、真っ直ぐに俺を見つめてくる。どうしてそんなに凛としていられるのか。一番危険なのはユーリなのに、どうして。

「だけどユーリは指名手配までされているから危険すぎる」
「そうね。でも死ぬと決まったわけではないし。前世の私たちはすごく平和な国で暮らしていたから、きっと処刑するという発想がへレーナにはないと思うの。国政には関わってないみたいだし、ただ自分の好き勝手にやってるだけという印象が強いわ」
「…………」

 確かにリンクが影たちから聞いたという情報では、政務は今まで通り人事の見直しなく行われている。へレーナはただ自分の命令が実行されることで満足しているようだった。

「まあ、私のことが嫌いみたいだから嫌がらせしたいだけだと思うのよ。それなら多少大胆に動いて、意表をついた方がいいと思うの」
「なにか策があるのか?」

 そう問いかけたら、ユーリはイタズラを企む子供みたいにニコリと笑う。

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