悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「そうでないなら、私が主人として命令するわ」
「命令……?」
「フレッド。私は一度自首するから、ちゃんと助けにきなさい。それができないなら専属護衛はクビよ」
「それはめちゃくちゃな命令だな」
「そんな主人に仕えたのだと思ってあきらめて」

 ふっと肩の力が抜ける。自分ひとりでなんとかしなければと思っていた。俺が全部守って、助けなければと思っていた。失うのが怖くて縮こまっている俺を、ユーリはあっさりと解放してくれる。


 俺の愛しい人。なによりも誰からも守りたい人。俺のすべてをかけても。


 そんな決意が湧き起こる。ただ優しげに微笑みを浮かべて、こんな情けない俺を包み込んでくれる。
 父上と母上に心の中で謝罪した。きっといざという時はユーリのために動いてしまうだろう。それほどまでに俺はユーリが大切だ。

「ユーリ」

 そう言って細い肩を抱き寄せた。ユーリはビクッと震えてそのまま動かない。

「絶対にユーリだけは失いたくない。必ず助ける」

 俺の決意を耳元で囁く。
 ユーリに誓う言葉は絶対だ。なにがなんでも成し遂げてみせる。
 たとえ周りが血の海になっても、屍の山になっても。


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