悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

27話 貴方だから

 フレッドが目の前にいる。

 大切だからこそ私は消えたのに、なぜか泣きそうな顔で私の前にいる。

 喜んではいけないのに、嬉しくて切なくて思わずフレッドのローブをギュッと握った。

「えっ……!? なんで!?」
「……ユーリ、ずっと探してた」
「イリス様は!? 婚約したんでしょう!?」
「……手紙にも書いてあったが、いったいなんの話だ?」

 顔を上げて眉間に皺を寄せたフレッドが、逆に問いかけてきた。
 だって、隣国の令嬢と婚約したのではないのか? それはイリス様ではなかったのか?

「だって、フレッドは隣国の貴族令嬢と婚約したって……」
「ああ、確かに婚約した。ユーリと」
「!?!?」

 フレッドの言葉に意味がわからず、言葉が返せない。
 なぜ、フレッドは私と婚約などしたのだろうか? 完全に相手を間違えていると思うのだけど。

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