悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 最初に気が付いたのは、とても聡明な方だということだ。
 ユーリエスは事業を立ち上げたいらしく、その核となる商品の開発をしていた。普通の貴族令嬢なら人を雇い注文だけつけて終わらせるのに、自身で研究や開発をしているのには驚いた。

 さらにメイドや家令にも慈愛を持って接している。使用人が失敗しても怒鳴りつけることはなく、理由を聞いて改善案を出していた。

 そうすることで使用人の働く環境はどんどんよくなるし、人材育成にも繋がる。怒鳴られないからのびのびと仕事もできて、よりユーリエスの役に立とうと使用人たちは努力した。

 こういうやり方もあるのかと、俺が学んだくらいだ。貴族は目下に決して謝罪をしないのがほとんどだが、ユーリエスは自分に非があると思ったら素直に謝罪する。

 そのことに心を動かされた使用人は少なくない。そうやって、俺も含めて忠誠心の高い使用人に囲まれているのだが、本人はそれに気が付いていないようだった。
 そんなことろも、ユーリエスらしくていいと思った。

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