悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

6話 失って気付くもの(クリストファー視点)

     * * *



 僕が王太子クリストファーとして生を受けたのは、歴史あるバスティア王国だ。
 決して大きくはないが、過去には王族から勇者や聖女を輩出し世界に貢献した国でもある。

 また金色の波打つ髪に、若葉色の鮮やかな瞳が王家の色で、天使のように高潔で美しい見た目は民衆の心まで掴んだ。そのため王族の命令は絶対的で、臣下たちはどんな命令にも従った。

 たとえそれが未婚の令嬢を手籠にしようと、自分の妻を寝取られようと、異議を唱えることはなかった。現に私が好き勝手やっても誰もなにも言わない。
 そういった秩序の中でこの国は保たれている。

 この日は貴族の令嬢子息のデビュタントの夜会が開かれていた。十八歳を迎え今日から一人前の貴族として扱われる。つまりその立ち居振る舞いが家門に影響を与えるのだ。

 そこでひとり薔薇のように美しい令嬢がいたので、ベッドが用意されている休憩室へと連れ込んだ。ベッドへ押し倒し、いつものように命令してやった。

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