悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「フレッドか、来ると思っていたよ」
「それなら話は早いです。俺はユーリ様の専属護衛として帝国へ行きます。許可をください」

 フランセル公爵はバスティア王国の宰相を務めるほど、有能な人物だ。とある事情もすべて話した上で公爵家の護衛として雇ってもらえたのだから、俺の言いたいこともわかっているに違いない。

「本当に任せていいのか?」
「当然です。もうとっくに覚悟を決めています。むしろこの時を待っていました」
「今はただの父親として聞いている。私の娘を何者からも守り抜けるか? 決して泣かせないと約束できるか?」
「——どんなことからも、どんな相手からも守り抜き、決して悲しませるようなことはしません」

 鋭いグレーの瞳に浮かんだ猜疑の念が、ゆっくりと霧散していく。フランセル公爵が視線を逸らしたことによって、絡みついていた視線も途切れた。

「もし、娘を泣かせたら、私は絶対にお前を許さんぞ」
「はい、肝に銘じます」
「ではユーリエスを頼む。どうか幸せにしてやってくれ」
「お任せください」

 こうして俺はフランセル公爵の許可も得て、ユーリの専属護衛として帝国へ旅立った。

 ユーリの部屋へ戻り一緒に行くことになったと報告した。その時のユーリのポカンとした顔がこれまた愛らしくて、密かに悶えることになった。


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