悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「くっ、いいから質問に答えろ!!」

 こちらの話は聞かないのに、自分の質問に答えろとは本当に身勝手な男だ。だけど、確かに以前付き合っていたDV男がこんな感じだった。クリストファー殿下もDV男の才能があると確信に変わる。
 …… 婚約破棄できて本っっっっ当によかったー!!!! こんなところで男運の悪さが役に立つなんて思わなかったけど!!
 私がひっそりと胸を撫で下ろしいると、隣に立つフレッドの殺気を感じ取ったのか、王太子殿下は浮かせた腰をソファーに下ろした。

「では僭越ながら申し上げます。私は王家への忠誠と家門のためを思い、クリストファー殿下と婚約を結んでおりました。政略的な婚約でしたが、確かに愛はございました」

 本当に以前の私はこんな男のどこがよかったのか。金髪に若葉色の瞳という、いかにも王子らしい見た目しかいいところがない。DV気質で浮気性なんて、いくら王太子でもごめんだ。

「そうだろう! ならなぜ……!」
「それは、クリストファー殿下がご進言差し上げても聞き入れず、数多の令嬢たちと浮気されたからです」

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