悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それにいずれ王太子妃となる私が、浮気という問題すら解決できなければ政治的手腕を疑われる。醜い嫉妬と、私だけを見てほしいという気持ちも重なって、浮気相手を排除し続けた。ずっと一途に愛してくれていたら、こんな結果にならなかったのに。

 それにだ。今の私にとってなによりも重要なのは、ダラのプロを極めることだ。王太子妃なんてやったら確実にそれどころではなくなる。絶対になにがなんでも避けなければならない案件だ。

「あんなものは遊びに過ぎないとわかっているだろう! 将来はお前が私の妻になるのだから、ゆったりと構えていればいいのだ!」
「……いえ、私はそれほど寛容にはなれません。度重なる裏切りですっかり心が枯れ果てたのです」

 これも本心だ。前世で浮気されて傷ついた心と、今世で傷ついた心が、あふれるように愛が湧いていた心を枯れさせた。ひび割れた心ではどんなに愛が湧いても、その隙間からこぼて落ちいくばかりだ。

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