推しがいるのはナイショです!
「誰だよ、五十嵐って」
 前を向いたままの久遠が言った。低い声。……怒っているの?

「違うの、あれは……」
「彼氏はいないんじゃなかったのか? 嘘だったのかよ」
「嘘じゃないよ」
「どうだか。そいつの名前偽名に使うくらい好きなんだろ?」
「五十嵐課長はそんなんじゃないわよ」
 顔だけ振り向いた久遠に、思わず足を止める。

 冷たい目。そんな目を、一度見たことある。
 初めて会った時、ナンパ男をにらんだあの目だ。

「だましてたのはどっちだよ」
「久遠……」
「帰る」
 一言言って、久遠は足を速めて行ってしまった。
 私は、追うこともできず、その背を見送った。

  ☆

 MV、返し損ねちゃったな。
 あれ以来、久遠からなんの連絡もない。
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