推しがいるのはナイショです!
 名前の事、後ろめたい気持ちも手伝って、訂正する機会を逃してしまっていた。
 久遠はどう思っただろう。騙されていたこと、まだ怒っているだろうか。連絡ないのは、その証のような気がする。

 謝りたい。

 今日はあれほど楽しみにしていたコンサートなのに、こんな気分で楽しめるんだろうか。
 あらためて考えたら、あっちは芸能人でこっちは一般人じゃない。ナンバーをブロックされてたら、謝る機会すら与えてもらえない。それを確かめてしまうのが怖くて、私からも連絡できなかった。

 でも。今日が終わったら連絡してみよう。もしもまだつながっているなら、ちゃんと謝ろう。久遠を傷つけたまま終わるなんて……絶対、嫌だ。
 そう思いながら一日を追え、明日の会議の準備をしていた時だった。

「え……」
 私は、チェックしてた書類を見て絶句した。
「た、高塚さん」
「なんですかあ」
 あきらかに五十嵐課長に対する返事よりワントーン低い声で、高塚さんが答えた。
 あの後、高塚さんが久遠のことを言い出すことはなかった。よほど、あの時の久遠が怖かったのかな。
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