推しがいるのはナイショです!
「そうなんですう。私、これでいいって言われてたのに、いまさらそんなこと言われてもぉ」
 するととたんに、涙目になって高塚さんが唇を噛んだ。

「確かにこれじゃ使えない。田口さん、確認していなかったんですか?」
 課長に聞かれて、自席にいた主任が気まずそうに答えた。
「作り方の相談はされましたが、その後は確認していなかったので……」
「そうですよぉ、それでいいって、主任が言ったんですぅ。わかってたらちゃんとやってましたぁ」
「確認ミスだな。直しておいてくれ」
 資料を渡されそうになった高塚さんは、潤んだ目のまま五十嵐課長を上目遣いに見上げた。

「でも、今日は祖母の病院に行かなくちゃならないんです。面会日が限られていて、おばあちゃん、私に会うのを楽しみにしていたのに……それに、水無瀬さんの方が仕事は早いじゃないですか」

 よくもこう次から次へと……悔しいけれど、今はごねている場合じゃない。実際、確かに私ならそれほど手間のかかる作業じゃない。数時間もあれば終わるだろうけど、これを高塚さんにやらせたら明日の朝までになんて絶対に間に合わない。PCの練度は主任も高塚さんと同レベルだから、すぐにこれ作れるのは私くらいしかいない。

 だけど、今日は……
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