推しがいるのはナイショです!
 数が多いからめんどうだけど、難しい作業ではない。だから高塚さんでもできると思って任せておいたのに。
 一息ついて時計を見ると、ちょうど7時になるところだった。

(始まっちゃったな)
 ここからアリーナまでは2時間近くかかる。まだ仕事は終わらないから、資料を作ってから行ってもコンサートは終わってる。
 悔しくて悲しくて、涙が浮かんだ。

 プラチナチケットが紙くずになったのは泣いても泣ききれないし、席を一つでも開けてしまったのはラグバにも他のファンにも申し訳なさすぎる。
 私はスマホを取り出した。今日のコンサートはライブ配信もしているから、そのチケットをさっき買っておいた。

 どうせ他に誰もいないんだし、ここで見ちゃえ!
 キーボードをたたく音だけが響いていた広いオフィスに、歓声が響き渡った。

『みんな! 今日は来てくれてありがとう!』 
 タカヤが言って、火花の爆発とともに曲が始まった。
 知らず知らず、手が止まる。
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