推しがいるのはナイショです!
 アリーナへ着いた時には、当然ながらもうそこに人影は何もなかった。数時間前まではきっとたくさんの女の子で溢れていたんだろう。今はただ、夜の空に黒くて大きな建物がそびえるだけだ。

(いないのかな。でも……)
 荒い息を吐きながら、私はその建物を見上げる。
(久遠)
 涙がにじんだ。

 会いたい。すごく、今、会いたいよ。

「どうかしましたか?」
 ふいに声を掛けられる。振り向くと、守衛さんが立っていた。

「今日のお客さん? 何か忘れものでも?」
「あ、いえ、そうじゃないんです。すみません」
 言って、私はあわてて背を向ける。すると、背後からさらに声がかかった。

「あなた、お名前は?」
 名前?
 私は、ゆっくり振り向く。

「私……水無瀬……いえ」
 彼の、知っている名前。
「五十嵐、るなと言います」
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