完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
「あの、前回って私変なことしましたか?」
「ん。した」
「えっ! なにを」
「観覧車一緒に乗ってくれたら話す」
「そういうのって彼女と乗るものでは?」
「彼女にしたい人を誘うのもアリだと思うけど」
真っすぐな目で見つめられて、思わず下を向く。
──どこまで本気かわかんないなぁ。
恋愛経験のない千紗には微妙な言い回しはわからない。少なくとも、千紗に好意を抱いているのは間違いなさそうだった。
前菜のカプレーゼが運ばれてきた。
「たくさん食べてね」
普段貧しい食生活を送っているので、高級レストランは緊張する。
──一口200円くらいしそう。
「私、別にかわいくないですし、物好きですか? 冴えない女専門とか?」
「いや、眼鏡くらいじゃそのかわいさは隠せてないよ」
「くっ」
なんだろう、こういうことを平気で言うのは。最近ニュースで見た国際ロマンス詐欺の手口がこんなふうな甘い言葉で女性を惑わしていた。
井村が千紗を騙してもなにも搾り取ったりはできないはずだが。
──もしかして体目当て?