完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
「家に帰ったら見せたいものがあるんだ」
井村は静かにそう言った。
☆
「これ、田吾作と会ってくれたらプレゼントしようと思ってたんだけど」
井村がDVDを渡してきた。
「?? これなんですか?」
「見てみて」
二人でリビングでそれを再生して見ることにした。随分古い映像のようで画質が荒い。
「これ……うち?」
見覚えのある部屋は、自宅だ。一体どういうことだろう。画面を食い入るように見つめていると、これまた見覚えのある人が出てきた。
「お父さん……?」
若い。横にはベビーベッドがある。
父は赤ん坊──つまり千紗をしばらくいとおしそうに抱っこしてあやしたあと、ベッドに戻して、ギターを手に取った。
「これね、この娘のために作曲したんですよ。すごくいい出来だから残したくてね。この子の幸せを願って作りました 」
照れくさそうに笑うと、ギターを弾きだす。
ゆったりとしたテンポの、優しい調べ。聞いている人の心に寄り添うような温かくて切なく哀愁の漂うイントロ。
中盤から転調し、力強く感情を一気に放出させるかのようなメロディ。
一音一音がきらめき、意思をもっているようだった。
赤ん坊の寝かしつけに聞かせるには、あまりにドラマっチックな曲だ。