完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
どうやら井村から逃げたわけではないようで一安心する。
「お母さんの具合が悪いなら仕方がない」
「はい。井村さんにはご迷惑をおかけしました」
「正直に言うと会社で事件のことは噂になってた。これから君がどうするか決めたら連絡を下さい。俺は、ここで君が帰るのを待ってるから」
「…………はい」
「くれぐれも危険な仕事は探さないでね」
電話を切るとベッドの上に寝転んで目を閉じる。まだ千紗の甘い香りが布団に残っていた。
「あああああーーーー待つなんて言ったけど待てねぇ。大体あの子危なっかしすぎる。なんだよ、臓器売買って! 若い女の子が検討する仕事じゃないだろ」
だが逆に言えば、千紗はそこまで追いつめられているということだ。
今まで特に大きな不運に見舞われることもなく、平和に生きてきた井村とは違う。
あの細い肩に、親の借金がかかっているのだ。心細くないわけがない。
なにもできない自分が歯がゆかった。