完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される

 やっぱり音楽がやりたいな。別にエッチな格好しなくてもいいわけだし。でも家を売っちゃって本当に後悔しないのかな。
 縁側でした線香花火とか、庭で飼っているメダカとか、父の書斎にまだ残っている好きな漫画だとか、色々なものが目に浮かんだ。
 北海道にいたほうが、穏やかな暮らしができるのはわかっている。
 千紗はいつもの癖で田吾作に相談しようとスマホを取った。

 ──あ、でも田吾作さんは井村さんなんだった。
嘘をついて別人の振りして近づいてきたことには複雑な想いを抱いていたが、一緒にいるいちに彼の誠意が本物であることはわかってきた。
でなければ、身の危険を顧みず千紗を助けたりはしないはずだからだ。
──いい人だったな。夜は結構しつこいけど。
ちょっと、いやかなり変だけど、田吾作としても千紗のことをいつも心配してくれていた。
 ──電話、してみようか。
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