完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
段々声が小さくなる。井村が千紗の手を取り、顔を覗き込む。
「つまり、俺が好きってことだよね? 付き合ってもいいってこと?」
「ありていに言えばそうなります。やぶさかではないって言うか」
「もうやり捨てされるかと思ってた」
「や、やり捨て? 私が?」
結構強引にことに及んでおいて、やり捨てとは聞き捨てならない。
井村が千紗の胸に顔を埋めた。心底ほっとしている様子に、千紗はこの優しい人に変な心配をかけすぎてしまったことを思い知った。
「ごめんなさい。ちゃんと言います。井村さんが好きです。ちゃんと好きです。田吾作さんと同じくらい……」
「──なんだろう、この達成感と多幸感は。仕事でも学業でも味わったことがない……。もう俺のとこには戻ってこないと思ってた」