完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
「人を好きになるのに理由なんかいらない。好きなとこなら、たくさんあるけど。ただ言葉にすると、どれも安っぽくてありきたりになるから」
「Jポップの歌詞みたい」

 恥ずかしさから茶化してしまう。こういうところがモテない理由なのだろう。

「真実味がない? 本当に好きだと人は語彙力を失うのかもしれない」
「この前はなんだか雰囲気と勢いで、爛れた関係になっちゃいましたけど、やっぱり徐々に心を通わせて、段々仲が深まっていくっていうのが、望ましい男女交際なんじゃないかなって……って聞いてます!?」

 千紗が理想の恋愛について語っていると、押し倒された。
 顔が近づいてきて、唇が重なった。なし崩し的に関係をもってしまった前回より、緊張が増す。なにより普段は優しい井村の夜が結構すごいのを思い出してしまった。
 ──一晩に何度も……あれは普通なのかな?
 いない時にこっそりネットで調べてみようと思う。
 千紗の戸惑いをよそに、井村は完全に臨戦態勢に入っている。
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